1976年に韓国・経済企画院から発刊された「請求権資金白書」50ページからの第1編第3章第3節を日本語訳したものです。

 

※参考サイト naver専門情報

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要旨
  • 対日請求権資金導入確定後、すぐ民間人に補償を実施することが適切なことだと認識
  • しかし、政府の財政事情、各産業の均衡開発による国民所得向上を優先し、1975年度まで民間人補償を延ばしてきた
  • 民間補償は対日民間請求権申告管理委員会において証拠及び資料の適否を審査し、当該請求権申告の受理が決定されたものが対象となった

 

第3節 ウォン貨資金の造成と活用

 

1.ウォン貨資金の造成

 

政府は対日請求権有無償資金の導入により造成(収入)されたウォン貨資金を効率的に管理運用し経済開発に寄与させ、民間補償問題などを円滑に妥結するため「請求権資金の運用及び管理に関する法律」(1966年2月19日、法律第1741号)第6条に依拠「請求権資金管理特別会計法」(1966年4月2日法律第1774号)を準備、運用してきた。

請求権資金管理特別会計は対日請求権無償資金により導入される原資材及びその他施設機資材の販売代金により生じるウォン貨資金の管理のための徴収金計定(※)と産業施設材導入のための有償資金の元利金償還資金管理のための借款計定で構成されている。

※計定(계정)=勘定

1966年から1975年まで10年間にかけて造成(収入)されたウォン貨資金総額は1506億ウォン規模に達しており、計定別で見ると徴収金計定が1139億ウォン、借款計定が367億ウォンとなっている。

このように造成されたウォン貨資金を歳入内訳別に分類してみると、徴収金計定では官需用物資販売収入15,722百万ウォン、民需用物資販売収入14,466百万ウォン、原資材販売収入47,461百万ウォン、清算計定収入15,485百万ウォン、前年度移越金(※)7,951百万ウォン、施設物資現金収入12,142百万ウォン、預託金利子収入315百万ウォン及びその他収入377百万ウォンなどに区分され、借款計定は借款転貸元金収入13,191百万ウォン、借款転貸し利子収入19,058百万ウォン、預託金利子収入717百万ウォン及び前年度移越金(※)3,708百万ウォンに区分されている。

※移越金(이월금)=繰越金

一方、1976年度の請求権資金管理特別会計予算によると、歳入総額は徴収計定が2,818百万ウォン、借款計定が10,726百万ウォンで合計13,554百万ウォンとなっており、内訳別としては徴収金計定における2,818百万ウォンは全額前年度移越金となっており、借款計定では借款転貸元金収入4,111百万ウォン、借款転貸利子収入4,530百万ウォン、預託金利子収入239百万ウォン及び1,856百万ウォンの前年度移越金で構成されている。

以上からみるとき1976年の請求権資金管理特別会計予算の歳入額を合わせて1966年から1976年まで造成されたウォン貨資金総額は、徴収金計定116,737百万ウォン、借款計定47,410百万ウォン、都合164,147百万ウォンに至っている。

これを再度内訳別に分類してみると、徴収金計定では対日請求権無償資金の導入が75年末で締め切られた関係で1975年末までの造成金額に変動がなく、ただ前年度移越金において1976年の2,818百万ウォンが加算され、10,769百万ウォンへ増加した。

そして借款計定は借款転貸元金収入17,302百万ウォン、借款転貸利子収入23,588百万ウォン、合計40,890百万ウォンの借款転貸収入と預託金利子収入956百万ウォン及び前年度移越金5,564百万ウォンに区分される。

一方1966年から1976年まで造成(収入)されたウォン貨資金の計定別構成は徴収計定71.1%を占めており、借款計定は28.9%を占めているところ、科目別では徴収計定の現資材販売収入が全体の28.9%を占め、最も大きな比重を占めており次に14.4%を占める借款転貸利子収入10.5%の借款転貸元金収入などの順になっている。

請求権資金管理特別会計法第3条第1項によれば「徴収金計定は協定第1条1(a)の規定により日本国から受ける資金により導入される物資の販売収入と溶液の提供を通じて徴収される金額及びこれと関連するその他収入を歳入として農業、林業、水産業、中小企業、鉱業、基幹産業、社会間接資本を拡充する事業とその他経済発展に寄与する事業及び請求権資金の管理に関する法律第5条の規定による民間請求権の補償と同法第4条第3項の規定により請求権資金管理委員会が定める経費のための支出を歳出にする」と規定しており、第4条第1項によれば「借款計定は協定第1条1(b)の規定により政府が日本国から受ける借款資金の転貸金の元利金回収、借款資金の運用から生じるウォン貨資金融資金の元利金回収及びその他収入を歳入とし、経済発展のための融資、借款元利金償還及び氏の他借款資金の運用に必要な経費のための支出を歳出にする」と規定している。

このように請求権資金管理特別会計法第3条と第4条の規定に依拠、対日請求権有無償資金の歳入により造成(収入)されたウォン貨資金は主に経済発展に所要され内資の調達と有償資金の元利金償還のために使用された。

1966年から1975年までウォン貨資金の歳出総額は143,984百万ウォンで、現在執行中にある1976年度の請求権資金管理特別会計予算額を合わせれば歳出総額は147,537百万ウォンに達しているところ、計定別では徴収金計定歳出が105,811百万ウォン、借款計定歳出が41,726百万ウォンで構成されている。

そして基幹産業の育成のために浦項綜合製鉄工場建設に徴収金計定歳出総額の16.5%に該当する17,422百万ウォンを使用し、水産振興のために6,513百万ウォンを使用、水産業の近代化に寄与し、科学技術教育のために1,276百万ウォンを使用し科学技術振興に寄与した(<表1-3-15>参照)。

特に徴収金計定中民間請求権補償に8,678百万ウォン、独立有功者事業基金造成のために2,000百万ウォンを投入したところ、次の節で詳説することにする。

一方、借款計定の歳出内訳をみると借款元金償還に10,315百万ウォン、借款利子償還に17,772百万ウォン、都合28,087百万ウォンが有償資金の元利金償還のために支出され経済開発特別会計預託金3,000百万ウォン、財政資金特別会計預託金9,693百万ウォン、請求権資金管理及び補償業務費3百万ウォンなどに使用された(<表1-3-15>参照)。

 

<表1-3-14>請求権資金特別会計年度別歳入内訳

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<表1-3-15>請求権資金特別会計年度別歳出内訳

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2.民間人に対する補償

対日請求権資金の導入が確定した後、すぐ民間人に補償を実施することが適切なことだったが、政府の財政事情と請求権資金が10年間にかけて分割導入されるという点を考慮し、その導入が完了する1975年度に補償を実施することになるものとし、当時経済開発計画を急いでいた政府としてはこの資金で各産業の均衡された開発を通じて国民所得を向上させることが何よりも差し迫った課題だったため、その間民間人に対する補償問題を延ばしてきたのである。

しかし、政府は対日民間請求権補償問題を解決するため請求権資金の導入締切年度以前の1971年5月から1972年3月の間にかけて対日民間請求権の申告を公告し、これを接受し、1974年12月21日付で民間人に対する補償対象、方法、手続きなどを規定する「対日民間請求権補償に関する法律」を制定公布した一方、これの施行のための細部手続きを規定する「同法施行令」を1975年4月1日付で制定公布し1975年7月から民間補償を実施しており、1977年6月30日まで継続し実施することになっている。

 

a.補償の対象

民間補償の対象は対日民間請求権申告管理委員会において証拠及び資料の適否を審査し、当該請求権申告の受理が決定されたものを対象とする。

ここで申告の対象となる範囲は対日民間請求権申告に関する法律第2条第1項にこの法の規定による申告対象の範囲は1947年8月15日から1965年6月22日まで日本国に居住したことがある者を除外した大韓民国国民が1945年8月15日以前に日本国及び日本国民に対して持っていた請求権等で次の各号に掲記するものとする。

ただし「対日民間請求権の保有による一切の果実と法人が保有する請求権のうち政府の持分に該当するものは包含しない」と規定しているところ、具体的な対象範囲は次の通り。

a.旧軍政法令第57号により指定された金融機関に預入した預入金と金融機関が保有している日本銀行券及び日本国政府の補助貨幣

b.1945年8月15日以前に発行されたもので現物がある次の有価証券

  1. 日本国政府が発行した国債
  2. 日本貯蓄券
  3. 日本国の地方債
  4. 日本国に本店を置いた日本国の公法人で大統領令が定める法人が発行する社債と日本国政府が保証する社債

c.日本国に本店を置いた日本国に所在した日本国金融機関に預入された預金

d.日本国に本店を置いた日本国に所在した日本国金融機関に日本国以外から送金されてきた海外送金

e.1945年8月15日から1947年8月14日まで日本から帰国した大韓民国国民が帰国時日本政府機関に寄託した寄託金

f.日本に本店を置く日本の生命保険会社に大韓民国または日本で納入した保険料と受け取ることになった保険金

g.大韓民国に本店を置いた法人が日本国にあった支店の財産整理により生じた剰余金中、大韓民国国民の持分

h.日本国で預入または納入した日本政府に対する次の債権

  1. 郵便貯金、振替預金及び郵便為替
  2. 簡易生命保険及び郵便年金の納入金

i.「日本国により軍人、軍属または労務者として召集また徴用され1945.8.15以前に死亡した者」であるうえ、これに対する補償請求権者の遺族としては、非徴用者の死亡当時、その者と親族関係にあった者で申告日現在次の1に該当する者を言う。

  1. 子女
  2. 父母
  3. 成年男子である系直卑属がなくなった祖父母

 

b.補償実績
(1)申告及び補償総括

政府は1971年5月から1972年3月の間にかけて対日民間請求権の申告を公告接受したところ、総申告件数は109,504件に達した。

民間請求権の申告内訳をみると「対日民間請求権申告に関する法律」第2条第1項1号〜8号の規定による財産関係に対する申告が97,753件で総申告件数の89.2%、同法第2条第1項9号の規定による被徴用者の死亡による申告が16,787件で10.8%であり、申告金額は財産関係において1,636,736線ウォンであった。

対日民間請求権申告管理委員会では申告された請求権の証拠および資料を審査した結果、財産関係において4,068件に対して1,417,320千ウォン(法定除外分金融機関申告分9件の1,391,677千ウォンを含む)、被徴用者死亡申告分において1,682件都合5,750件の都合5,750件を請求権申告の証拠不充分および資料未備で申告拒否ないしは補償除外する一方、569件は日本国照会中にあり(70.4.30現在)、財産関係において93,685件、被徴用死亡者において9,546件の総103,221件を補償支給することに決定した。

1975年7月1日から始まった補償支給は77年6月30日まで実施されるこことなっており、76.4.30現在の補償金支給実績は支給決定件数比78.3%に相当する80,543件、補償支給額は決定額比94.5%に該当する8,979百万ウォンに達しているところ、現金6,559百万円、証券2,420百万ウォンで支給した。

一方補償金支給決定において決定された補償額は財産関係が6,641百万ウォン、被徴用者死亡が2,861百万ウォンの都合9,502百万ウォンだが、現金で6,996百万ウォン、証券で2,506百万ウォンを支給することに決定した。

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(2)補償実績

1976年4月10日現在、補償支給現況をみると補償支給決定103,226件に対して支給決定額は9,502,226千ウォンに達しているが、未支給分22,482件の511,051千ウォンを除外して80,744件に対して8,991,175千ウォンの支給実績を見せている。 

補償支給実績を地域別にみると、大邱が15,748件に対して1,798,598千ウォンで最も多く、次が釜山で14,115件に対し1,661,987千ウォン、その次が馬山13,505件の1,415,623千ウォンで慶尚道地域が件数において都合43,368件で過半数を超える53.7%を占めており、金額面でも4,876,208千ウォンで54.2%も占めている。

いずれにしても76.4.30現在の補償金支給実績は支給件数において78.2%、支給金額において94.5%に達しているところ、補償金支給期間の1977年6月30日までには全ての対日民間請求権補償に関する問題が終結することとなる。

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3.独立有功者基金事業 

a.事業の概要

対日請求権有無償資金の導入により造成(収入)されたウォン貨資金は主に経済開発に所要される内資調達または有償資金の元利金償還のために使用され、特にその一部である2,000百万ウォンに達するウォン貨資金が独立有功者の事業基金に投入された。

独立有功者事業基金は「独立有功者事業基金法」(1973年3月10日法律第2588号)および「同施行令」(1975年8月4日大統領令第7715号)に依拠、韓・日合併から1945年8月14日まで国内外で独立運動をするなかで死亡または身体的障碍を被った独立有功者とその遺族の生活安定のための援護事業と独立記念事業を実施するのにその目的がある。

同事業は「独立有功者事業基金法施行令」第15条に依拠、請求権資金により造成されたウォン貨2,000百万ウォンを基金として「投資基金法」および「銀行法」に規定する金融機関に預託、元金を蚕食することがなく現金の利子等果実収入で事業を遂行するようになっており、事業決定など主要事項は独立有功者事業基金運用委員会において行うが、基金の管理および運用等は援護処長が行う。

(1)事業の内容

独立有功者および遺族の生計安定事業などを包含する同事業の主要事業別内容をみると次の通りである。

一つ目、生計扶助金支給事業:独立有功者およびその遺族の生活安定のための給与金(月額)を支給している。

二つ目、奨学金支給事業:独立有功者の子女および孫子女の中・高・大学生および研究生中、成績が良好な者に対する学費補助金を支給した。

三つ目、独立運動史編纂事業:独立有功者事業基金運用委員会内に独立運動編纂委員会を置き、独立運動に関する資料の収集および独立運動史を編纂している。

四つ目、墓地事業:殉国先烈の遺骸安葬のために国立墓地内に愛国志士墓域(忠烈台)を設置、管理しており地方散在墓所に対しても環境造成事業を実施している。

五つ目、生活安定貸出事業:独立有功者および遺族中無住宅者の生活基盤造成のために無理し住宅資金貸出と自立・自活のための低利の農業資金を貸し出している。

六つ目:その他事業:独立有功者の銅像、功績碑、会館などの建立と伝記発刊および祭忌行事など各種の独立記念事業を支援し、有功者本人の慶弔事に扶助金などを支給している。

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(2)援護事業の対象者

「独立有功者事業基金法」による援護対象者は1945.8.14以前に死亡した独立有功者と1945.8.15光復以降に死亡した独立有功者に区分しているところ、

一つ目、光復以前に死亡した者の場合、①本人および大統領表彰受賞者、②配偶者、③子女(出稼者以外)、④戸主相続者である孫子女、⑤父母などであり

二つ目、光復以降に死亡した独立有功者の場合においても光復以前死亡者の場合と同様だが、ただし戸主相続者である孫子女は援護対象から除外されている。

一方、援護対象者現況と対象者一人当りの生計扶助金月支給額、奨学対象者一人当りの年支給額および生活安定貸出限度額の年度別推移は次の通り。

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b.事業の実績 

対日請求権有無償資金による導入資材の売買代金で造成されたウォン貨資金の中から20億ウォンを投入、独立有功者基金事業を円滑に遂行してきているところ、独立有功者および遺族の生計安定と遺子女の勉学、独立記念事業など重要事業の具体的な実績は次の通り。

一つ目、独立有功者および遺族の生計扶助金支給により生活安定に寄与した。

68年から75年まで有功者および遺族に支給された生計扶助金総額は929百万ウォンで、延べ98,608名の有功者および遺族が生計扶助金の恵沢を受けた。1-3-29

二つ目、独立有功者遺子女に奨学金を支給するものとして独立有功者の後裔らが将来立派な社会人として自立できるよう教育を与えるのに大きく寄与した。

奨学金支給実績をみると68年から75年まで総支給額は126百万ウォンで、延べ11,333名の中高等および大学生が恵沢を受けた。

本奨学金は75年度2学期からは国家有功者等特別援護法改正に伴い独立有功者子女および孫子女に対する学資金を国庫から支給するようになっており、本基金事業においては廃止した。1-3-24

三つ目、無住宅独立有功者の生活基盤造成のために住宅購入および新築アパートを分譲入居させ、73年からは独立有功者の所得増大を期し生活安定基盤を造成できるよう貸出を実施したところ、住宅貸出および農業貸出を合わせて70年から75年までの実績は延べ854名に251百万ウォンを貸し出した。1-3-25

四つ目、国立墓地内に愛国志士墓域である忠烈台を造成、各処に散財した墓所中、遺族が移葬を希望する場合には忠烈台に安葬し、地方所在墓所の碑石像石設置および環境整備事業を実施し、75年度には光復30周年記念事業の一環として海外安葬先烈の遺骸3位を奉還、忠烈台に安葬した。1-3-26

五つ目、独立有功者事業基金運用委員会に69年4月独立運動史編纂委員会を設置し、総146百万ウォンを投入、独立運動史別正史と資料集を発刊したところ、年度別発刊目録は<表3-27>の通り。1-3-27

六つ目、独立有功者の銅像建立、伝記発行、功績碑建立などの独立記念事業、有功者および遺族の援護のための生活安定金支援事業、老齢独立有功者の余暇善用のための光復会員善導事業などに68年から75年まで43百万ウォンを使用した。1-3-28

最後に69〜70年にかけて無住宅独立有功者の住宅支援を目的に林野を購入し住宅団地を造成し基金増殖のために11百万ウォンを株式投資したことがあるが、75年度に売却処理し投資全額を回収した。1-3-23

 

 

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第4章 対日請求権資金の部門別寄与

第1節 農林部門